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アパート経営で法人化する目安は?メリット・デメリット、方法を解説

順調にアパート経営が行えるようになると、法人税や所得税の観点から、法人化が視野に入ってくるのではないでしょうか。
アパート経営を法人化することで、節税や相続税対策といったさまざまなメリットが得られる可能性があります。

特に所得税や相続税の負担軽減を考える大家の方にとって、法人化は重要な選択肢です。
しかし、法人化には手間や費用がかかるだけでなく、規模によってはかえってデメリットが大きくなる場合もあります。

この記事では、アパート経営を法人化する際の目安やメリット・デメリット、さらに具体的な手続き方法について解説します。
法人化を検討中の方に向け、相続税対策や税務の注意点も詳しく紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

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    アパート経営の法人化とは?

    アパート経営の法人化とは、個人名義で行う経営を法人として行うことを指します。
    法人化することで、節税や相続対策など多くの利点を得られる一方で、注意すべきデメリットも存在します。
    ここでは、アパート経営を法人化する仕組みとその概要について解説します。

    個人事業主と法人化の違い

    個人事業主は会社設立の手続きを行わず、税務署に開業届を提出し、個人で事業を営んでいる人のことです。
    一方で、法人は法人設立手続きを行い、法律によって認められた組織や団体のことを指します。

    個人事業主と法人化の違いは、事業の法的な位置づけや税金、責任範囲にあります。
    個人事業主は事業者自身が収入や経費を一括で管理し、所得税が課されます。
    一方、法人化すると法人そのものが事業主体となり、法人税や法人住民税が発生します。
    また、経費として認められる範囲が広がるため、節税効果が期待できるでしょう。

    個人事業主と法人の違いは以下のとおりです。

    項目個人事業主法人
    事業開始までの手続き開業届を税務署に提出するだけで完了定款作成、認証、登記など複雑な手続きが必要
    事業開始までにかかる費用ほとんど不要(収入印紙代や必要書類の作成費程度)数十万円(定款認証費用、登録免許税、印紙代などが必要)
    課税される主な税金所得税、消費税(条件により課税)、住民税法人税、法人住民税、法人事業税、消費税(条件により課税)
    経費の範囲認められる範囲が比較的狭い法人の活動に関連する広範な経費が認められる
    事業主(株主)の責任無限責任(事業の負債を個人が全て負担)有限責任(出資額を超える負債の負担はない)
    銀行口座個人口座でも運用可能だが、事業専用口座の使用が推奨される法人口座の開設が必須
    社会保険加入は任意(国民健康保険や国民年金に加入することが一般的)会社負担で社会保険(健康保険、厚生年金)への加入が義務
    会計・経理簡易簿記でも対応可能複式簿記が必須。税務署への決算報告や税理士のサポートが必要な場合も

    アパート経営の法人化を検討すべきタイミング

    アパート経営を法人化するタイミングは、主に税金や規模、相続対策を考慮して決定します。
    特に、個人の合計所得が1,000万円を超える場合、法人化したほうが良いとされています。
    これは、所得税が所得に応じて税率が上がる累進課税制度を採用しているためです。

    個人の所得に対する所得税の税率は以下のとおりです。

    課税される所得金額税率控除額
    195万円以下5%0円
    195万円超330万円以下10%97,500円
    330万円695万円以下20%427,500円
    695万円超900万円以下23%636,000円
    900万円超1,800万円以下33%1,536,000円
    1,800万円超4,000万円以下40%2,796,000円
    4,000万円超45%4,796,000円
    参考:国税庁「No.2260 所得税の税率

    たとえば、年収1,000万円の場合、所得に対して23%の税率が生じます。
    ここに、住民税率10%が加わるため、合計43%です。それに対して資本金1億円以下の法人にかかる法人税の税率は23.2%です。
    地方法人税(10.3%)、住民税(7%)、事業税(3.6%)を既定の算式に当てはめると、法人実効税率は29.74%となります。

    仮に個人の所得が695万円超900万円以下であれば、住民税を含めた合計税率は33%です。
    従って、個人の所得が900万円超になると、アパート経営は法人で行ったほうが有利になります。

    たとえば、年間の家賃収入が1,000万円を超える場合、所得税の負担が増加し、法人化による節税効果が大きくなります。
    また、事業を拡大する際や資金調達を行う場合も、法人の信用力を活用できるため有利です。

    相続税対策が必要な場合も、法人化するタイミングです。
    法人名義で所有する資産は、遺産分割が容易になるほか、相続税の課税対象が抑えられる可能性があります。
    一方で、設立費用や運営コストがかかるため、経営規模や目的を慎重に見極めることが重要です。

    アパート経営を法人化するメリット

    アパート経営を法人化することで、節税や資金調達のしやすさなど、多くのメリットを得られます。
    個人事業主と法人化の違いを理解し、自身の経営に最適な選択をすることが重要です。
    ここでは、法人化の具体的なメリットについて解説します。

    所得税の節税につながる

    アパート経営を法人化すると、所得税の大幅な節税効果が期待できます。
    個人事業主の場合、家賃収入が累進課税の対象となり、所得が増えるほど税率が上昇する仕組みです。
    法人化することで法人税率が適用され、所得税と比べて税負担を抑えられる可能性があります。

    法人化後は役員報酬を経費として計上できるため、課税所得を減らすことが可能です。
    これにより、家賃収入から差し引いた金額が課税対象となり、節税につながります。
    法人住民税や事業税なども発生しますが、それ以上に節税効果が得られるケースが多いです。

    特に、高所得の大家であればあるほど、法人化による節税メリットは大きくなります。
    長期的な経営計画を考える際に、節税効果をシミュレーションすることが重要です。

    役員報酬を経費にできる

    アパート経営を法人化すると、役員報酬を経費として計上できるのが大きなメリットです。
    個人事業主の場合、自分が受け取る所得は経費として認められません。
    しかし、法人化することで経営者自身の役員報酬が経費扱いとなり、課税所得を減らすことが可能です。

    家族を法人の役員にすると、役員報酬で報酬を移転できます。
    役員報酬には贈与税や相続税がかからないこともメリットです。
    たとえば、子どもに1,000万円を渡すと贈与税がかかりますが、役員報酬として分割で支払われた場合は贈与税がかかりません。

    ただし、役員報酬の設定は財務状況や業績、市場の相場などに基づき適切な金額にする必要があります。
    不適切な設定は税務署に否認される恐れがあるため注意が必要です。
    家族を役員に含める際も、法律に則った運用を心がけましょう。

    経費の認められる範囲が広がる

    アパート経営を法人化することで、経費として認められる項目が大幅に増加します。
    個人事業主の場合、経費として計上できる範囲は限定的です。
    一方で、法人化すると事業に関連するさまざまな支出が経費として扱えるようになります。

    たとえば、役員報酬や会議費、福利厚生費、さらには法人名義の保険料や交際費なども経費に含めることが可能です。
    また、法人所有の車両や設備の維持費も経費として計上できるため、実際に支払う税金を抑えられるかもしれません。

    経費の幅が広がることで、結果的に課税所得を減らし、節税効果を高めることができます。
    ただし、不適切な経費計上は税務署に否認される可能性があるため、法人化後は適切な会計処理を行うことが重要です。

    相続税の節税につながる

    法人設立後、または不動産取得後3年以内に相続が発生した場合、その不動産は原則として時価で評価されます。
    これは、取得したばかりの不動産は、その取得価額が市場価格を反映していると考えられるためです。
    含み益(時価と帳簿価額の差)も評価に反映されやすいため、株式の評価額が高くなる傾向にあります。

    一方、法人設立後、または不動産取得後3年を超えて相続が発生した場合、その不動産は相続税評価額で評価されます。
    相続税評価額は、土地は路線価方式や倍率方式、建物は固定資産税評価額に基づいて計算され、一般的に時価よりも低く設定されています。
    そのため、含み益が評価に反映されにくく、株式の評価額を抑える効果が期待できます。

    ただし、3年超経過すれば必ず相続税対策になるとは限りません。
    3年超経過しても期待した効果が得られないケースも存在します。
    相続税対策として法人化する際は、不動産の取得時期だけでなく、さまざまな要素を総合的に判断し、専門家に相談することが大切です。

    相続時に遺産分割しやすくなる

    また、相続人間で意見が対立した場合、遺産分割協議が難航し、紛争に発展する可能性もあります。
    これは、相続税対策としてだけでなく、円滑な相続手続きを行ううえでも大きな課題となるでしょう。

    一方、アパート経営を法人化していれば、相続の対象はアパートそのものではなく、法人の株式となります。
    株式は分割が容易であり、各相続人に分割して相続させられます。
    たとえば、相続人が複数いる場合でも、株式をそれぞれの相続人に適切な割合で分配することで、遺産分割をスムーズに行うことが可能です。

    また、株式を譲渡することで、不動産を売却することなく財産の現金化もできます。
    これにより、相続手続きの負担を大幅に軽減し、相続人間での紛争を未然に防ぐ効果が期待されます。
    円滑な相続を実現することは、経営を継続するうえでも重要です。

    家賃収入の分配時に贈与税がかからない

    個人でアパートを所有している場合、配偶者や子どもに家賃収入の一部を渡す行為は、贈与税の課税対象となる可能性があります。
    特に、高額な家賃収入がある場合、贈与税の負担は無視できるものではないでしょう。

    しかし、法人化することで、相続人に対し収益を役員報酬として分配できるため、贈与税が発生しません。
    役員報酬は給与所得として課税されますが、贈与税とは異なる税制が適用されます。
    そのため、個人間で家賃収入を直接やり取りする場合に発生する贈与税を回避可能です。
    適切な役員報酬の設定は、所得税の節税にもつながる可能性があります。

    赤字の繰越期間が個人より長い

    空室の発生や修繕費の増加などにより、一時的に赤字が発生することもあるでしょう。
    法人化していると、個人事業主よりも赤字を繰り越せる期間が長くなります。
    この繰越欠損金制度は、将来の利益と相殺することで、税負担を軽減する効果があります。

    個人事業主の場合、青色申告をしている場合でも、原則として赤字を繰り越せる期間は3年間です。
    一方、法人の場合、繰越期間は原則として10年間と、個人事業主よりも大幅に長くなっています。

    これは、法人のほうが事業の継続性が高く、長期的な視点で経営を行うことが想定されているためです。
    たとえば、設立初年度に多額の設備投資を行い赤字が発生した場合でも、その後10年間の利益と相殺することで、法人税などを抑えられます。

    長期経営を行ううえで、赤字の繰越期間が長いことは大きなメリットと言えるでしょう。
    この制度を有効に活用することで、節税効果を最大限に引き出すことが期待できます。

    融資などの資金調達がしやすくなる

    アパート経営を法人化することで、融資などの資金調達が容易になります。
    個人事業主として融資を受ける場合、個人の信用力や所得状況を見られる場合がほとんどです。
    しかし、法人として融資を受ける場合、法人の財務状況や事業計画などが審査の対象となります。

    法人格を持つことで、金融機関からの信用を得やすくなり、融資の審査が通りやすくなる傾向があります。
    これは、法人が個人よりも財務状況が明確に管理されており、事業の継続性も高く評価されるためです。
    また、法人名義で融資を受けることで、個人資産と事業資産が明確に分離されるため、万が一の場合でも個人資産への影響を抑えられます。

    さらに、法人化によって資本金を増資することで、自己資本比率を高められ、より有利な条件で融資を受けやすくなります。
    将来的な事業拡大を見据えている場合、法人化は資金調達の面で大きなメリットをもたらすと言えるでしょう。
    融資を受けやすくなることで、経営をよりスムーズに行うことが可能になります。

    債務時の責任範囲が限定される

    アパート経営の法人化によって、債務時の責任範囲が限定されることもメリットです。
    個人事業主としてアパート経営を行う場合、事業で発生した債務(借入金など)は、個人の財産全体に及ぶ可能性があります。
    事業がうまくいかず債務を返済できなくなった場合、個人の預貯金や自宅などの財産も差し押さえられるリスクを負っています。

    一方、法人化することで、債務の責任範囲は法人の財産に限定されます。
    これは「有限責任」と呼ばれるもので、万が一、法人が債務を返済できなくなった場合でも、株主(経営者)個人の財産が差し押さえられることは原則としてありません。

    たとえば、アパート経営のための融資を受けた場合、法人であれば法人の財産のみが担保となります。
    これにより、個人資産を守りながら、積極的に経営を行うことが可能です。

    アパート経営を法人化するデメリット

    法人化を検討する際には、メリットだけでなく、これらのデメリットも十分に理解しておくことが重要です。
    ここでは、アパート経営を法人化するデメリットについて解説します。

    法人化に手間と費用がかかる

    アパート経営を法人化する際には、様々な手続きが必要となり、相応の手間と費用が発生します。
    個人事業主として経営を行っている場合と比べ、法人設立の手続きは煩雑であり、専門家のサポートが必要となるケースも少なくありません。

    詳しくは口述しますが、会社設立時の手続きを司法書士などに依頼する必要があり、費用が発生します。
    また、法人設立後も、税務署や都道府県税事務所などへの届出が必要です。
    これらの費用は、資本金1円で設立できる会社もあれば、事業規模や融資を考慮するとある程度の金額が必要となる場合もあるなどさまざまです。
    法人化を検討する際には、手間と費用を十分に考慮する必要があります。

    法人運営に手間と費用がかかる

    アパート経営を法人化すると、運営していくうえでもさまざまな手間と費用が発生します。
    個人事業主であれば比較的簡易な確定申告で済んでいたものが、法人となると、より複雑な税務申告や決算手続きが必要です。

    たとえば、法人税、法人住民税、法人事業税などの税務申告が挙げられます。
    これらの手続きを税理士に依頼する場合にはその費用が発生します。
    また、個人事業主だと不要だった決算公告の義務や、役員変更時の登記手続きなども必要な作業です。

    さらに、社会保険への加入が義務付けられるため、社会保険料の負担も発生します。
    役員報酬を設定する場合は、役員報酬から差し引いた金額を納付する必要もあります。
    法人運営には、ある程度の知識と時間、そして費用が必要となることを認識しておきましょう。

    保険の変更・手続きが必要になる

    アパート経営を法人化すると、保険の変更や新たな手続きが必要になります。
    これは、保険の名義が個人から法人へと変更になるためです。
    たとえば、火災保険や地震保険などの損害保険は、所有者が変更になることから、名義変更の手続きが必要です。

    また、法人として新たに加入する必要がある保険も存在します。
    役員や従業員を雇用する場合、労災保険や雇用保険といった社会保険への加入が義務付けられます。
    これは、個人事業主の場合とは異なる点です。
    さらに、法人向けの保険商品(PL保険や役員賠償責任保険など)を検討する必要が出てくる場合もあります。
    これらの保険は、事業運営上のリスクをカバーするために有効です。

    保険の名義変更や新規加入手続きは、手間がかかる作業ではありますが、万が一のリスクに備えるために、適切に行うことが重要です。

    売却時の税率が高くなる

    アパート経営を法人化すると、不動産を売却する際の税率が高くなる可能性があります。
    個人で不動産を売却した場合、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税される仕組みです。
    この税率は、所有期間によって異なり、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率が低くなります。

    しかし、法人で不動産を売却すると、譲渡益は法人の所得として扱われ、法人税等が課税されます。
    法人では、個人の長期譲渡所得に適用されるような軽減税率の適用はありません。
    そのため、売却益によっては、個人で売却する場合よりも税負担が大きくなる可能性も。

    特に、設立して間もない法人や、含み益が大きい不動産を売却する場合は、税負担が大きくなる傾向があります。
    売却益にかかる税金を抑えるためには、適切な事業計画と税務戦略が求められるでしょう。

    税務調査が入る確率が上がる

    アパート経営を法人化すると、税務調査が入る確率が個人事業主より高くなる場合があります。
    法人は個人よりも事業規模が大きく、取引も複雑になることが多く、税務署の調査対象として選定されやすいというのが理由です。
    特に、節税効果を意識した経費計上や役員報酬の設定が適切でない場合、税務調査の対象となるリスクが高まるでしょう。

    税務調査では、帳簿書類の確認や取引の流れや経費の計上など、多岐にわたる項目が調査されます。
    適切な帳簿管理や税務処理を行っていれば問題ないですが、不備があった場合は、修正申告や追徴課税の対象となる可能性があります。
    そのため、法人化後は、適切な帳簿管理を行い、税務署からの信頼を得られる運営を心がけることが大切です。

    税理士などの専門家と顧問契約を結び、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
    税務調査は、経営を行ううえで避けられないリスクの一つです。
    日頃から適切な対応を心がけるだけでなく、税の知識を身につけておきましょう。

    規模が小さいと損する恐れがある

    アパート経営を法人化することは、必ずしも全てのケースでメリットがあるわけではありません。
    特に、経営規模が小さい場合、法人化によってかえって損をしてしまう可能性があります。
    法人化によって法人住民税や事業税が発生し、これらは事業規模に関係なく一定額が必要になるため、小規模経営では運営コストが高くなる場合があるためです。

    法人設立費用、税理士への報酬、社会保険料の負担、法人税や法人住民税、法人事業税などの税負担などが挙げられます。
    これらのコストは、個人事業主として経営を行っている場合には発生しない、もしくは低く抑えられていたものです。
    そのため、家賃収入が少ない場合や、空室が多く発生している場合、これらのコストが経営を圧迫する要因となり得ます。

    規模が小さい段階では、個人事業主として経営を行い、事業規模が拡大してから法人化を検討するという選択肢も考慮に入れるべきです。
    経営を行ううえで、費用対効果をしっかりと見極めることが大切です。法人化は、規模に応じて慎重に判断しましょう。

    アパート経営の法人化にかかるコスト

    アパート経営を法人化する際には、設立費用や運営費用といったコストが発生します。
    これらのコストは、法人化のメリットと比較しながら判断する必要があります。
    また、規模や法人の種類によっても負担額が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
    ここでは、法人化にかかるコストの内訳について解説します。

    設立費用

    アパート経営を法人化する際には、さまざまな設立費用が発生します。
    これらの費用は、法人の種類(株式会社か合同会社かなど)や、手続きを専門家に依頼するかどうかによって変動します。
    主な設立費用として、以下のものが挙げられます。

    株式会社合同会社
    定款の認証手数料資本金100万円未満:1.5万円資本金100万~300万円未満:4万円資本金300万円以上:5万円
    定款用の収入印紙代4万円(紙)※電子定款の場合0円4万円(紙)※電子定款の場合0円
    定款の謄本手数料(250円×ページ数)2,000円程度
    登録免許税15万円~6万円~
    実印の作成代約3,000円~約3,000円~
    印鑑証明書代(約300円×枚数)300円~
    登記事項証明書(登記簿謄本)発行費(約500円×枚数)約500円~約500円~
    資本金1円~1円~

    これらの費用は、事業を行う上で必要な初期投資として捉え、事前にしっかりと準備しておくことが大切です。
    法人を設立することで、税の節税効果など様々なメリットを得られますが、初期費用が発生することを理解しておきましょう。

    運営費用

    法人設立後も、アパート経営を法人として運営していくためには、さまざまな費用が発生します。
    これらの費用は、個人の事業主として経営する場合とは異なる点も多く、法人ならではの費用も含まれます。
    以下に、主な運営費用をまとめました。

    株式会社合同会社
    住民税均等割7万円7万円
    社会保険料給与支払額の一定割合給与支払額の一定割合
    税理士報酬30~100万円30~100万円
    決算公告費用官報公告:6万円新聞掲載:10万~100万円電子公告:無料
    役員変更登記費用3~6万円
    株式総会費用規模によって異なる

    これらの費用は、経営を行ううえで継続的に発生する費用です。
    他にも、法人の運営には、事務所の賃貸費用や通信費、消耗品費などの経費が発生します。
    家賃収入からこれらの費用を差し引いた金額が、法人の利益となります。
    法人化によって、税の節税効果が期待できますが、運営費用も考慮した上で、法人化のメリットを判断することが重要です。

    法人化する際にかかる3つの税金

    アパート経営を法人化すると、税金に関する負担が発生します。
    法人特有の税金として法人税、法人住民税、法人事業税が挙げられ、それぞれの税率や計算方法は異なります。
    ここでは、法人化に伴う3つの税金について解説します。

    法人税

    法人税は、法人が得た所得に対して課される税金です。
    アパート経営を法人化した場合、家賃収入や売却益から必要経費を差し引いた金額が課税対象になります。
    法人税の税率は比例課税方式であり、法人の大小にかかわらず一定の税率で課税される課税方式です。

    普通法人の場合は、法人税の税率は以下のとおりです。

    区分所得法人税率
    中小法人(資本金が1億円以下)所得額が800万円超23.2%
    所得額が800万円以下15%
    上記以外全額23.2%
    参考:国税庁「No.5759 法人税の税率

    たとえば、資本金が1億円以下の中小法人の場合、課税所得800万円以下の部分には15%の軽減税率が適用されます。
    一方、800万円を超える部分には23.2%の税率が適用されるため、経営規模や所得額によって税負担が異なります。

    法人税の計算は複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
    適切な税務処理を行うことで、税の節税効果を最大限に引き出すことが可能です。

    法人住民税

    法人住民税は、法人の事務所や事業所がある都道府県と市町村に納める地方税です。
    法人税と同様に、法人の所得に応じて課税される「法人税割」と、所得に関わらず一定額が課税される「均等割」の2種類で構成されています。

    法人税割は、法人税額を基に算出され、税率は都道府県や市町村によって異なります。
    均等割は、資本金の額や従業員数などによって税額が異なり、赤字の場合でも納付する必要があります。
    法人住民税は、法人税と合わせて納付することが一般的です。

    具体的な税率や計算方法については、各自治体のウェブサイトなどで確認するか、税理士などの専門家への相談をおすすめします。

    また、法人住民税は、地域社会への貢献という側面も持っています。

    法人事業税

    法人事業税は、法人が行う事業活動に対して課される地方税です。
    所得に応じて課税される点は法人税割と共通していますが、法人事業税は事業の種類によって税率が異なる点が特徴です。
    アパート経営のような不動産賃貸業も課税対象となります。

    法人事業税の税率は、都道府県によって異なり、法人の所得金額に応じて段階的に税率が設定されている場合もあります。
    計算方法は、所得金額に税率を乗じて算出します。
    ただし、所得に対して課税されるため、赤字の場合は税金が発生しません。
    また法人事業税は、法人住民税と合わせて納付することが一般的です。

    相続税対策で法人化する際のポイント

    アパート経営の法人化は、相続税対策として有効な手段の一つです。
    しかし、法人化すれば自動的に相続税が節税できるわけではありません。
    適切な対策を講じることで、相続税の課税対象となる財産を抑え、節税効果を高めることが可能です。
    法人化を相続税対策として活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
    ここでは、相続税対策で法人化する際のポイントについて解説します。

    推定相続人を株主にする

    相続税対策として法人化を行う場合、推定相続人を株主にすることが重要なポイントです。
    推定相続人とは、将来相続が発生した場合に財産を相続する可能性のある人のことで、配偶者や子供などが該当します。

    法人を設立し、その株式を推定相続人に分散して保有させることで、相続財産を事前に分割可能です。
    将来発生する相続税の課税対象となる財産を抑える効果が期待できます。

    また、株式の贈与を行うことで、生前贈与による相続税対策も行えます。
    贈与税には暦年贈与の非課税枠や相続時精算課税制度などの制度を活用することで、節税効果を高められます。
    ただし、株主構成や配当の取り扱いは慎重に検討しましょう。

    法人化を進める際は、税理士や司法書士などの専門家に相談しながら、適切な手続きを行ってください。
    相続税の負担を軽減すると同時に、円滑な資産承継が実現できるでしょう。

    推定相続人を役員にする

    推定相続人を法人の役員にしておくことは、相続税対策として有効な手段の一つです。
    役員にすることで、役員報酬を支払うことが可能になります。
    この役員報酬は、法人の経費として計上できるため、法人の所得を抑え、法人税の節税に繋がります。

    また、役員として法人経営に関与することで、家族内での承継準備が進み、資産運用や意思決定がスムーズに行えます。
    さらに、法人内での役割を明確にすることで、将来の経営や財産の分配に関するトラブルも未然に防止可能です。

    ただし、役員報酬やその設定には税務上のルールが存在するため、専門家に相談して適切な運営を心掛けることが重要です。
    また、役員報酬を支払うことで、社会保険料の負担が発生することも考慮する必要があります。
    役員報酬の設定は、節税効果だけでなく、社会保険料の負担も考慮して、総合的に判断しましょう。

    資本金を1,000万円未満にする

    法人を設立する場合、資本金を1,000万円未満に設定することが、税の節税につながる重要なポイントです。
    これは、資本金の額によって、法人にかかる税金の一部が軽減される制度があるためです。

    資本金が1,000万円以上になると、設立初年度から消費税の課税対象となり、経営を圧迫することになりかねません。
    一方、1,000万円未満であれば設立から2年間は消費税が免除されるため、節税効果を得られます。
    また、法人住民税の均等割も、資本金の額によって税額が異なり、資本金が少ないほど税額が抑えられます。

    ただし、資本金の額は、融資の受けやすさや対外的な信用力にも影響します。
    そのため、単に税金だけを考慮して決めるのではなく、事業計画全体を考慮して適切な金額を設定することが重要です。
    資本金は、会社の設立時に設定する重要な要素の一つです。
    節税効果だけでなく、経営全体に与える影響を考慮して決定しましょう。

    建物を法人所有にする

    相続税対策として、建物を法人所有にすることは効果的な方法です。
    建物を法人に移転することで、相続時に課税対象となる個人資産を減らせます。
    その結果、相続税の負担を軽減することが可能です。

    具体的には、建物の評価額は相続税評価額で計算されますが、法人所有とすることで、株式評価額に置き換わります。
    株式評価額は、さまざまな要素を考慮して算出されるため、相続税評価額よりも低くなる傾向があります。

    名義変更の手続きは、司法書士に依頼して行うことが一般的です。
    また、名義変更に伴い、不動産取得税が発生する可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
    建物の名義変更は、相続税対策において非常に大きな効果を発揮します。
    名義変更の手続きは、司法書士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。

    土地の無償返還に関する届出をする

    土地を法人名義で借りている場合、無償返還に関する届出を税務署に提出することも重要なポイントです。
    この届出を提出することで、将来的に相続が発生した際、土地の評価額を抑える効果が期待できます。

    また、届け出がない場合、相続発生時に土地が貸付地として評価され、評価額が高くなる可能性があります。
    しかし、この届出を提出していれば、土地は自用地として評価されるため、評価額を抑えることが可能です。

    この手続きは、土地の名義変更とは異なり、あくまで税務上の取り扱いに関する届出です。
    届出は、税理士や司法書士に相談して行いましょう。
    この届出を適切に行うことで、相続税の課税対象となる財産を抑え、税の節税効果を高めることが期待できます。

    法人化の手順と必要な手続き

    アパート経営を法人化するには、いくつかの段階的な手順を踏む必要があります。
    単に会社設立というだけでなく、その前後の手続きも重要です。
    適切な手順を踏むことで、スムーズに法人化を進めることができ、後々のトラブル抑止にもつながります。
    ここでは、法人化の手順と必要な手続きについて解説します。

    法人の種類と所有方式を決める

    アパート経営を法人化するにあたって、まず決めるべき事項の一つが、どの種類の法人を設立するかという点です。
    アパート経営における法人の種類としては、株式会社や合同会社などが一般的です。
    それぞれの特徴を理解し、自身の経営スタイルや目的に合った法人形態を選択することが重要です。

    株式会社は、社会的信用が高く、資金調達の面でも有利です。
    株式を発行して第三者から資金を集めることができるため、経営拡大を目指す場合に適しています。
    ただし、設立費用が高く、運営には複雑なルールが伴います。

    合同会社は、設立費用が低く、運営の柔軟性が高いのが特徴です。
    役員の報酬や利益分配を自由に決めることができるため、小規模なアパート経営に向いています。
    一方で、社会的信用度が株式会社より低い場合もあるため注意が必要です。

    どの法人形態を選ぶかは、経営を行う目的や規模、将来の事業展開などを考慮して慎重に判断しましょう。
    必要に応じて、税理士や司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

    所有方式を決める

    所有方式は「建物のみ所有方式」と「土地建物所有方式」の2種類です。
    この2つは、土地を個人が所有するのか、あるいは法人が所有するのかという違いがあります。

    建物のみ所有方式は、法人が建物のみを所有し、土地は個人の名義のままにする方式です。
    この場合、土地の相続税対策にはなりませんが、建物の相続税評価額を抑える効果が期待できます。
    ただし、土地の賃貸借契約を結ぶ必要があり、地代の設定や契約内容によっては、税務上のリスクが発生する可能性もあるため注意が必要です。

    土地建物所有方式は、法人が土地と建物の両方を所有する方式です。
    相続発生時に土地と建物が法人の資産として評価され、個人の相続財産から除外できるため、相続税対策として効果を発揮します。
    ただし、法人設立時に不動産取得税や登録免許税といった税金が発生する可能性があります。
    また、法人が所有するため、売却時には法人税が課税されます。

    どちらの方式もメリット・デメリットがあるため、しっかりと検討しましょう。

    定款を作成し認証手続きを行う

    法人化するために、定款を作成し、必要な認証手続きを進めましょう。
    定款とは、法人の基本的なルールや運営方針を定めた書類で、会社設立の際に必須の書類です。

    定款には以下のような内容を記載します。

    • 会社の目的:不動産賃貸業を営むことなど具体的な事業内容
    • 会社名:法人名を記載(例:「○○アパート経営株式会社」)
    • 本店所在地:会社の住所を特定
    • 資本金:出資金の総額を明記
    • 発起人情報:出資者の名前や住所

    定款は、書面または電磁的記録で作成する必要があり、作成後には公証役場での認証手続きが必要です。
    公証人による認証を受けることで、定款の法的効力が認められます。
    認証手続きには、定款の他に、発起人全員の印鑑証明書や本人確認書類などが必要です。

    認証後、定款の謄本が発行されます。
    この謄本は、後の法人設立登記の手続きで必要となる重要な書類です。必
    要に応じて、司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

    出資金(資本金)を払い込む

    定款の認証手続きが完了したら、次に出資金(資本金)の払い込みを行います。
    資本金は、会社の事業活動の元手となる資金であり、会社の信用力を示す重要な指標の一つです。
    払い込みを行うことで、会社が正式に設立するための準備が整います。
    小規模なアパート経営の場合は、資本金を1,000万円未満に抑えることで、節税効果を得られる場合があります。

    定款作成後、資本金を代表者名義の銀行口座に振り込みます。
    その後、設立する法人の口座を開設し、その口座に払い込まれた資金を移すという手順で行います。
    払い込みが完了したら、払い込みを証明する書類(払込証明書)を作成する必要があります。

    資本金の額は、会社の規模や事業内容、将来の事業展開などを考慮して適切に設定することが重要です。
    小規模なアパート経営の場合は、資本金を1,000万円未満に抑えることで、節税効果を得られる場合があります。

    必要書類を準備して登記申請を行う

    出資金(資本金)の払い込みが完了したら、いよいよ法務局への登記申請を行います。
    登記申請は、会社を正式に設立するために必要な手続きであり、この手続きが完了することで、法人として活動を開始できます。

    登記申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

    • 定款(認証済みのもの)
    • 本金払込証明書:出資金の払い込みを証明する書類
    • 発起人全員の印鑑証明書:個人事業主や発起人の確認用
    • 取締役の就任承諾書:取締役の同意を証明するもの
    • 設立登記申請書:法務局で取得可能

    また、登記申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局で行う必要があります。
    登記申請後、審査が行われ、問題がなければ登記が完了し、登記事項証明書が発行される流れです。
    登記事項証明書は、会社の実在を証明する重要な書類であり、金融機関との取引や各種契約などで必要となります。
    登記申請の手続きは、司法書士に依頼することも可能です。

    登記後、法人の印鑑登録も同時に行うことをおすすめします。
    この印鑑は契約書類や税務手続きで使用するため、早めの準備が必要です。
    また、法人住民税の手続きや税務署への設立届出も忘れないようにしましょう。

    個人事業の廃業手続きを行う

    法人設立の手続きと並行して、個人事業主としての廃業手続きを進める必要があります。
    この手続きを怠ると、税務や法的な問題が発生する可能性があるため注意が必要です。

    廃業手続きは、税務署への届出が中心となります。
    「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出し、廃業の手続きが完了します。
    また、廃業に伴い、所得税の確定申告(廃業申告)を行う必要があり、青色申告の取りやめ届出も必要です。
    さらに、消費税の課税事業者であった場合は、消費税の確定申告も求められます。

    廃業時には未払金や未収金、さらに設備や資産の名義変更が発生する場合があります。
    これらは法人に引き継ぐ際の手続きや、税務処理に影響を及ぼすため、司法書士や税理士のサポートを受けながら進めると安心です。

    まとめ

    アパート経営の法人化は、相続税対策や所得税の節税、事業の拡大など、多くのメリットを得られます。
    しかし、法人化には手続きが必要となり、法人特有の税金が発生することも理解しておく必要があります。
    法人化を検討する際には、目的を明確にし、メリットとデメリットを十分に比較検討することが重要です。

    法人化の手順としては、法人の種類と所有方式の決定、定款の作成と認証、出資金の払い込み、登記申請、個人事業の廃業手続きなどがあります。
    これらの手続きは、専門家のサポートを受けながら進めることで、スムーズに行うことができるでしょう。

    法人化は、経営を行ううえで大きな決断となります。
    節税効果だけでなく、経営全体に与える影響を考慮し、慎重に判断するようにしてください。
    法人化について疑問や不安がある場合は、税理士や司法書士などの専門家への相談をおすすめします。

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