東京メトロ、上場で非運輸事業の強化を目指すも都営地下鉄との統合は未定
東京メトロが10月23日に上場を果たしました。年間20億人以上の乗降客を誇り、JRを除く私鉄では
国内最大の規模を誇るものの、運輸事業への依存度が非常に高いことが課題とされています。
投資家からは、不動産をはじめとする非運輸事業の強化が求められていますが、長年議論されてきた
都営地下鉄との統合は今回の上場では具体的な進展が見られません。
上場の目的と期待される効果
今回の上場で東京メトロ自身の資金調達は行われませんが、山村明義社長は
「経営改革を加速させるための基盤」と位置づけ、透明性の向上や、社員の士気向上、
優秀な人材確保につながると期待を寄せました。
また、業績が株価に反映されることで経営の自立性が高まり、企業の健全な発展が促進されるとしています。
非運輸事業の強化が鍵
2024年3月期決算によると、東京メトロの売上高3,892億円のうち、運輸事業が約9割を占めています。
この高い依存度は新型コロナウイルスの影響を受け、乗客の減少により経営の不安定さが浮き彫りになりました。
そのため、山村社長は「非運輸(非鉄)事業の強化が不可欠」と強調しています。
東京メトロは小田急電鉄などと連携し、新宿駅西口の再開発に参加するなど、
今後も他社との協業が重要な鍵を握るとされています。
地下鉄事業の特性上、広大な土地の保有は難しいため、不動産開発を他社と協力して進める戦略が
求められています。
鉄道事業の堅調な業績
東京メトロは銀座線や丸ノ内線といった人気路線を有し、2023年度には23億人を超える乗降客数を記録。
これは2位の東急電鉄を大きく引き離す結果です。また、2030年代には有楽町線と南北線の延伸が
計画されており、さらなる乗降客の増加が見込まれています。
都営地下鉄との統合は先送り
一方、長年検討されてきた都営地下鉄との統合は依然として進展していません。都営地下鉄は約2,000億円の
累積欠損金を抱えており、統合が実現した場合、これが株主からの反対を招く可能性があります。
山村社長は「今はそれぞれの企業が独自に努力する段階」と述べ、
今回の上場が統合に直接関係するものではないと説明しました。
今回の上場により、東京メトロは運輸業からの依存を減らし、不動産を含む多角的な事業展開を
進める重要な転換点に立っています。
しかし、都営地下鉄との統合という大きな課題は依然として残されており、今後の動向が注目されます。
引用・詳細はこちら「産経新聞」